平成26年1月19日(日) 帝人(株)松山事業所にて、女性エンジニアと研究者の方を講師に迎え、第四回実験サイエンスカフェ for girlsを開催いたしました。
「帝人の科学技術を体験しよう!」
今回は、帝人で活躍している女性の研究者とエンジニアの3名の方に講義と実験を担当していただきました。まず、帝人がどんな会社で、どんな製品が作られているかの説明がありました。実際に帝人で作られている高機能繊維や先端素材についての紹介があり、中高生のみなさんは、企業テイジンとは何をしているところか、どんな仕事が行われているのかを知ることができました。
次に、研究開発の分野で働く青山さんに、実験を指導していただきました。最先端高機能繊維の製造にもつながる高分子化合物の合成によりナイロン繊維を合成する実験です。
A液とB液を二層になるように注ぎ、両液の界面をピンセットでつまんで引き上げるとナイロン繊維が合成されました。
工場では機械が合成された繊維を巻き上げていくのですが、今回は自分たちの手でガラス棒に巻きつけていきます。太くなったり、細くなってしまったり、機械のようにうまくはいかないけれど、ナイロン繊維がどんどん合成されていきます。単量体(モノマー)が規則的に反応して重合体(ポリマー)が合成されることにより次々と合成されていくそうです。
エンジニアとして機械設計を担当されている伊藤さんからは、「エンジニア」という職業について説明していただきました。一つの製品が出来上がるまでには、様々な分野のプロフェッショナルが知恵を出し合い、検討を重ねます。生産工場をもつ企業では、工場の設備を設計するエンジニアの仕事も大事な分野です。初めて知るエンジニアという職業がどのようなものかわからなかった中高生もプラントの設計をシュミレーションソフトを使いながら体験してみることで、より具体的に実感できたようでした。
エンジニアとしてプラントの電気設備を担当されている渡辺さんのお話では、「物を作ることが好き、英語が苦手、という理由で理系を選択したが、グローバル企業の一員として世界の人々とともに働いていくうえで英語はなくてはならないもので、中高生のみなさんも頑張ってください。」とのメッセージをいただきました。
講師のみなさんがどんなことに興味を持ち、なぜ理系を選択したのか、どういう過程で現在の仕事へつながっていったかなどを聞くことができ、中高生のみなさんは自分の将来の進路と重ね合わせて興味深そうに聞いていました。理系を選択することで将来の選択枝が広がり、可能性が導かれることに気づけた講義となりました。
講議と実験の後、入社1年目と2年目のエンジニアと研究員の方にも参加していただき、5名の方とともにカフェ形式にて、交流会を行いました。
まさに理系の最先端で働く方々とふれあい、現在取り組んでいる仕事の面白いところややりがい、これからの夢や仕事への意欲を聞くことにより、理系に進んだその後のイメージを持つことができたようです。
また、企業で働くという意識、仕事の内容等を聞いたことで、職業に対する興味を促すことができました。帝人松山事業所では、私たちの暮らしの未来を変えるような素晴らしい素材が研究・開発されており、サイエンスカフェの会場では、材料やそこから商品化された品々の展示ブースを設け、実際に説明を聞きながら商品に触れる機会も持ちました。
お話を聞かせてくださった講師からは、文理選択の際に、理数系が得意、創ることが好き、理系の職業は専門性が高く就職に有利、などの理由で理系を選択したという話もあり、また実際に働いてみると、報告書の作成をするには文章を書く力、そしてコミュニケーション能力など国語力が大切であること、また、グローバル企業として世界の人々とともに仕事をしているからには、英語は絶対に必要であることを実感したそうです。女子中高生のみなさんは、先輩方からの仕事上で得られる達成感やそれに伴う困難などの経験を間近で聞くことができ、今後の将来の進路選択の参考になったようです。
平成25年12月8日(日)にて新居浜工業高等専門学校にて愛媛大学農学部の松枝 直人先生、エルニジョハン先生を講師として迎え、第三回実験サイエンスカフェ for girlsを開催いたしました。
「農業と環境保全に役立つゼオライト」
講演の初め、松枝先生より「放射性セシウムと聞いて、何を考えますか?」と質問がありました。「セシウムってなんだろう?」「健康被害は?」「どうしたら除染できるかな?」「原発は必要か?」など、考えることは皆それぞれです。自分の疑問がどこに向いているのか、そこに着目すれば、理系・文系どちらに自分の興味が向いているのかがわかる手がかりになるというお話がありました。
また、ゼオライトの吸着反応がどのように行われているのかを椅子取りゲームを例にとてもわかりやすく教えていただきました。
エルニ先生の講演では、ゼオライトの説明、農業分野・環境分野へのゼオライトの利用や近年問題になっている放射性セシウムによって汚染された土壌を除染する実験などを紹介していただきました。
ゼオライトの陽イオンの一部をAg+と交換し、UVを照らすと蛍光現象が見られました。 ゼオライトの蛍光体はレアアースに代わる蛍光体としての利用が期待されています。
UVランプを照らすと発光するゼオライト
粉1(ゼオライト)、粉2(石炭灰)にメチレンブルーの溶液を入れると、石炭灰のほうはあまり変化がないのに対して、ゼオライトの入った試験管ではゼオライトが色素を吸着して液が透明になりました。
実験を通して、ゼオライトの「吸着」という能力を実感することができました。この技術の応用が福島の土壌の除染に役立つことを願っています。
講演と実験の後、松枝先生、エルニ先生、大学生・大学院生の学生さんと一緒にカフェ形式にて、交流会を行いました。
先生方へ「理系科目は苦手だが、好きな科目は理系。理系に進んでもいいですか?」という質問がありました。選ぶのは本人だが、得意・不得意ということよりも、好きということを重視して進路を選んだほうが良いと思うというアドバイスがありました。
エルニ先生には、「楽しかった実験・失敗した実験などありますか?」という質問に、失敗だと思っていたのに、思いがけず大成功した実験の体験談を披露していただきました。
大学生の学生さんたちへの質問も、次々に飛び交い、普段あまり接する機会のない大学生のお兄さん・お姉さんにたくさんのアドバイスをもらえ、中高生のみなさんには進路選択のヒントとなったようでした。
平成25年11月24日(日)愛媛大学宇和島エクステンションにて愛媛大学プロテオサイエンスセンターの林 秀則先生を講師として迎え、第二回実験サイエンスカフェfor girlsを開催いたしました。
毎日の食事で摂取している「タンパク質」。私たちが生きていくうえで欠かせない栄養素のひとつです。今回はそのタンパク質に焦点をあて、タンパク質とは何か、タンパク質の働きとは、タンパク質は細胞内でどのように作られるかという内容の講演が行われました。
タンパク質を通して、ミクロの視点から生命活動の現象を考えてみたり、生命の共通点に気づいたりと学校の授業とは違う新しい視点に学びを深めました。
さらに遺伝子組換え技術やバイオテクノロジーなどの応用技術も紹介され、参加した中高生たちは、初めて知る生命科学の分野に興味を持ったようでした。
「試験管の中でタンパク質を作ろう!」
普通、タンパク質は生きた細胞の中でしか作られません。しかし、今回はこの反応を試験管の中で再現してみます。
「オワンクラゲ」の発光タンパク質を観察
小麦の胚芽から取り出した成分にmRNAとアミノ酸を加え、細胞内の反応を部分的に再現します。mRNAが持つ情報は「オワンクラゲ」という生物がつくる発光タンパク質の情報です。
小麦胚芽の液にmRNAを注ぐ様子
約1時間後
発光タンパク質の合成に成功しました!
実際に実験を通して、タンパク質を組み立てるために何が必要か、DNA、mRNA、アミノ酸にはどんな役割りがあるのかを実感できました。
講演と実験の後、林先生、大学生・大学院生の学生さんと一緒にカフェ形式にて、交流会を行いました。
「タンパク質が光るのは、ホタルの蛍光とは違いますか?」という実験に関する質問や「先生が理系を選んだきっかけは何ですか?」という進路に関する質問など様々な質問がありました。
大学生のみなさんにも、理系を選択した理由や将来の夢などを紹介してもらい、中高生のみなさんの今後の進路選択の参考になったようです。
大学生の学生さんに大学生活(授業・サークル活動・バイト)や実験・研究の内容、受験勉強方法など、いろんなことを教えてもらい、とても有意義な時間をもつことができました。
平成25年10月27日(日)愛媛大学理学部にて愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センターの平井寿子先生を講師として迎え、第一回実験サイエンスカフェ for girlsを開催いたしました。
私たちに身近な物質である、水、炭素、メタンなどが高圧条件下において性質が変化し、その性質を調べることによって、地球内部のマントルの状態や、宇宙の氷惑星・衛星の内部構造を推定できるという内容の講演が行われました。
実際に分子構造モデルや、鉛筆の芯(グラファイト)からできたダイヤモンド(ヒメダイヤ)を見せていただいたり、マントルから出てきた鉱物などに触れてみたりする機会もありました。
身近な物質から始まり、地球内部や宇宙のことまで思いを馳せることのできるとてもロマンあふれる講演でした。
講演後、研究室にて実験を見学しました。大学院の学生さんが、ダイヤモンドによって高圧条件を作り、氷が水に沈む重たい氷に変化する様子を見せてくれました。
世界一硬い人工ダイヤモンド「ヒメダイヤ」を合成する超高圧装置「BOTCHAN(ぼっちゃん)」を見学し、その装置の大きさに驚きました。研究員の方が「ヒメダイヤ」を合成する過程を説明してくれました。
講演とラボツアーの後、平井先生、大学生・大学院生の学生さんと一緒にカフェ形式にて、交流会を行いました。
先生がどのようなきっかけで理系の世界に進まれたかということや、現在に至るまでの貴重な体験談などをお話しいただき、これから理系を志す中高生のみなさんへとても参考になったようです。
最初は少し緊張気味だった生徒たちも、お菓子をいただきながらだんだんにリラックスして、大学生の学生さんとの会話では「なぜ理系に進学したのですか?」「受験勉強はいつから始めたらいいですか?」「どんな勉強の仕方をしましたか?」など、たくさんの質問が飛び交いました。
愛媛新聞に第一回実験サイエンスカフェが掲載されました。(平成25年11月6日 20面)